みちぱん書評録

しがない書店員・みちぱんによる超絶個人的見解の書評記録

川上和人「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

f:id:michipan:20180606094712j:plain

著:川上和人 版元:新潮社

 出張先は火山にジャングル、決死の上陸を敢行する無人島だ!知られざる理系蛮族の抱腹絶倒、命がけの日々!すべての生き物好きに捧げる。

(「BOOK」データベースより)

 

photo.png
みちぱん

今回はこちら。
超絶怒涛の鳥類学者、川上和人さんがおくる、
鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。です。

bunchou.png
ブンちゃん

鳥の本か。

photo.png
みちぱん

鳥大好き人間ですので。
やっぱり猛禽とか、キバタン、タイハクオウム、
ハシビロコウ、オオオニハシなどの
でっかい鳥が好きですねぇ。

bunchou.png
ブンちゃん

…ふーん。

photo.png
みちぱん

…あっ、もちろんフィンチ系の鳥も好きですよ。
やだなぁ、当たり前じゃないですか。

bunchou.png
ブンちゃん

………ふーん。

photo.png
みちぱん

貧乳の彼女の前で、TVの中の巨乳美女を
かわいいとうっかり言ってしまった気分…。

bunchou.png
ブンちゃん

で、この学者さんは鳥がそこまで
好きじゃないのに研究してるの?

photo.png
みちぱん

いや、このタイトル、言葉そのままの
意味じゃないんですよ。もちろん、
川上さんは鳥が大好きです。

bunchou.png
ブンちゃん

???
じゃあなんでこのタイトル?

photo.png
みちぱん

いいですか、ブンちゃん。
研究者になるというのは、その研究する分野を
それなりに好きじゃなければ、
絶対になれません。
研究職を諦めた私が言うのですから
ほぼほぼ間違いありません。

bunchou.png
ブンちゃん

説得力。

photo.png
みちぱん

ことに生物学者は、
「生き物かわいい、いっぱいちゅき」
の気持ちだけでも乗り切れません。
なぜなら、研究するには剥製にしたり
解剖をしたり、チップを埋め込んだり、
「かわいそうなこと」もしなければなりません。
ただ「好き」なだけでは研究できないのです。

bunchou.png
ブンちゃん

なるほど。
そういうのも含めての
「好きだと思うなよ。」ってことか。

photo.png
みちぱん

ただ川上先生の場合、
「このタイトルなら売れんじゃね」
という打算的な考えからこのタイトルに至った、
その可能性も捨てきれません。

bunchou.png
ブンちゃん

今までの力説はなんだったんだ。

photo.png
みちぱん

そ、そのへんは先生に聞いてみないとなんとも…。
この本を読んだ人なら分かると思うのですが
すごいユーモラスな人なんですよね。

bunchou.png
ブンちゃん

例えば?

 

鳥類が多くの人を惹きつけてやまないことは間違いない。子供向けの図鑑シリーズには、必ず「鳥類」の巻がある。たとえ妖怪ウォッチやドラえもんが大人気でも、「妖怪」や「猫型ロボット」の巻はない。鳥類の勝ちだ。

(「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」P2より)

 

bunchou.png
ブンちゃん

いや、それはないだろう。
というか猫型ロボットに関しては
ドラえもんとドラミちゃんしか知らない。

photo.png
みちぱん

なんと…!ブンちゃんはかの有名な
「ザ・ドラえもんズ」を知らないのですか!?

bunchou.png
ブンちゃん

なにそれ?

photo.png
みちぱん

映画ですよ。もう続編は作られていないみたいですが…。
ものすごくオススメ。
気になった方は調べてみてください。

 

6月には国民の祝日が1日もないと嘆いていたのは、のび太だ。

私は彼に指摘されるまで、この祝日法の構造的欠陥に気づいていなかった。のび太の洞察力にはいつも敬服する。

(「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」P50より) 

 

bunchou.png
ブンちゃん

らしいね。

 

同様に、バルタン星人やM78星雲人など、各星人の標本を多数収集すれば、種族による違いが明らかになる。こうして多様な標本を採集しておけば一安心である。 万が一、桃や竹の中から人型動物が発見された場合にも、精密な計測により種族が特定できる。

(「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」P72より)

 

bunchou.png
ブンちゃん

…どうやって多数収集するんだ?

photo.png
みちぱん

多数ってどのくらいでしょうね。100とか?
でも、サンプルさえあれば理論上は、
竹から生まれた人型動物=月人、みたいに
特定できるってことですよね。

bunchou.png
ブンちゃん

まぁ、理論上はね。

 

「チッチッ、白いのは尿だよ。糞はその横の黒い部分だぜ。ハニー」

「理系はデリカシーないから嫌い」

毛虫を見るような目で蔑まれ、彼女は去っていくかもしれない。しかし、そんな彼女もいつかきっと感謝するはずだ。君のおかげで同じ間違いを繰り返すことなく、次の彼氏の前で不正確な発言をして恥をかかずに済んだことを。

ふっ、イヤなことを思い出しちまったぜ。

(「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」P97より) 

 

bunchou.png
ブンちゃん

これって理系かどうかの問題?

photo.png
みちぱん

う、うーん…。

 

動機も行為も似たようなものだが、ストーカーと研究者には相違点がある。ストーカーは成果を自分のために使用するが、研究者は成果を公に披露することで研究を完成させる。一歩間違うとストーカーと露出狂を併せた複合犯罪者だが、成果の公表こそ研究者のアイデンティティである。

(「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」P158より) 

 

bunchou.png
ブンちゃん

確かに、なんか言い回しにセンスある。

photo.png
みちぱん

でしょう?書店員の新井見枝香さんと
ちょっと近しいものを感じました(笑)

bunchou.png
ブンちゃん

でもこれ、鳥のことについて
ちゃんと書いてあるの?

photo.png
みちぱん

そこは研究者らしくきちんとした
学術的見解もありますので安心してください。
それに、結構フィールドワーク多いんですよね。
無人島行ったときのエピソードとかすごいですよ。

 

夜間調査に、ヘッドランプは欠かせない。しかしランプには虫が寄って来る。光に魅せられた蛾が耳穴に飛び込んだのだ。世界はこんなに広いのに、なぜその軌道を選んだ。耳奥に侵入した蛾は、3分に一回鼓膜に体当たりしながら大暴れする。私は悶える。暴動の合間はギチギチ言いながら鼓膜に頬ずりしてくる。このままじゃ気が狂う。

(「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」P46より)

 

…うっ、おぇっ!

突如わき上がったのは、口内の不快感と嘔吐の声だった。ランプに集まる無数の小バエが、呼吸とともに口と鼻から侵入してくる。このまま電送機にかけられたら、恐怖のハエ男も夢じゃない。死体天国は、分解者たるハエ天国でもあったのだ。豊かな死体に支えられた豊満はハエどもが、息のたびに肺腑に達する。

(「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」P61より) 

 

bunchou.png
ブンちゃん

うわぁ…。

photo.png
みちぱん

私は虫が嫌いなので、
想像してリアルに吐き気が…。
すごいですよね。これでも鳥への探求心から
こういうところに行くんですよ。

bunchou.png
ブンちゃん

確かに、ストーカー級の人でないと
これは乗り切れないかもね。

photo.png
みちぱん

リアルで学術的で面白い、
そんな鳥についての本です。
川上先生の著書も他に読んでみたいですね!