みちぱん書評録

しがない書店員・みちぱんによる超絶個人的見解の書評記録

ミヒャエル・エンデ「モモ」

モモ

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著:ミヒャエル・エンデ 訳:大島かおり 版元:岩波書店

町はずれの円形劇場あとにまよいこんだ不思議な少女モモ。町の人たちはモモに話を聞いてもらうと、幸福な気もちになるのでした。そこへ、「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄ります…。「時間」とは何かを問う、エンデの名作。小学5・6年以上。

(「BOOK」データベースより)

 

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みちぱん

今回はこちら。
ドイツの名作家、ミヒャエル・エンデの「モモ」。
あまりに色々な人がオススメしており、
そしてオススメされ、読んでみようと思って
手に取った次第であります。

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ブンちゃん

名前だけは聞いたことあるな。
有名な児童文学だよね。

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みちぱん

児童文学って、子供のときに読むのと
大人になって読むのとじゃ、全然違うじゃないですか。
私は絵本とか児童文学も気になったら
ためらわずに買うのですが
まわりから「絵本なんて読むの!?」と言われます。
でも、今だからこそ読みたいんですよ。

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ブンちゃん

二度おいしい、みたいな要素あるよね。
それは分かるんだけどさ、
君、児童のときに児童文学を
読んでいなかったよね?

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みちぱん

うっ…そうなんですけど…。
読書歴浅いんですよね、これが。

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ブンちゃん

まぁ、だからこそいま読んでいるわけだけど。
これはどんなお話なの?

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みちぱん

「モモ」という女の子が主人公で
これがおそろしく聴き上手なんですって。

 

モモに話を聞いてもらっていると、ばかな人にもきゅうにまともな考えがうかんできます。モモがそういう考えをひきだすようなことを言ったり質問したりした、というわけではないのです。ただじっとすわって、注意ぶかく聞いているだけです。その大きな黒い目は、あいてをじっと見つめています。するとあいてには、じぶんのどこにそんなものがひそんでいたかとおどろくような考えが、すうっとうかびあがってくるのです。

(「モモ」P23より)

 

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ブンちゃん

ただ聞いているだけで?

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みちぱん

ただ聞いているだけで。
何も言わないのが逆に良いのかもしれませんね。
誰かに自分の考えを言うことで、
言葉が勝手に成長して自分のところに
跳ね返ってくるのかもしれません。
ただ、「聞いているだけ」にしろ
誰にでもできることではないので、
モモはそういう才能があったんでしょうね。

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ブンちゃん

自分の考えを文章にしてみると、
ここがダメだとかここが良いとか
分かるときってあるもんね。
モモを前にしてしゃべるとそんな感じなのかな。

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みちぱん

そうかもしれませんね。
モモはたちまち大人からも子供からも
人気者になるのですが、
そのころ町では、「時間貯蓄銀行」の
外交員を名乗る灰色の男たちが現れます。
それは人のようで人でない、
近づくと恐ろしく冷たい存在らしく、
人々に時間を節約、削減し銀行に貯蓄するように迫ります。

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ブンちゃん

時間を節約?削減?
寿命を寄こせってこと?

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みちぱん

私も最初はそう思っていたのですが、
どうやら違うみたいなんですよね。
外交員たちが貯蓄しろと言っているのは
どうやら「余暇」のことみたいです。

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ブンちゃん

ということは、趣味とかに使う時間ってことか。

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みちぱん

そういう時間が人生の無駄だというんですよ。
何の生産性もないって。
バカげてますよね。
でも、この人のようで人でないものを
生み出したのは、どうやら人間みたいなんですよ。

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ブンちゃん

「その趣味やってなんか良いことあるの?」
と言ってくる人間は実際にいるしね…。
そういう人間の心が生み出した影、みたいなものかな。

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みちぱん

しかも搾取しようとする時間はそれだけじゃないんですよ。
例えば通勤、通学の時間。
長時間かけるのは非効率かもしれないけれど、
その間に読書をしたり語学学習したり
スマホで情報キャッチしたりと
色々と楽しんでいる人もいるじゃないですか。
また、例えばひとりのお客さんにかける時間。
ひとりにたくさん時間を使って
丁寧な接客をウリにしているお店もあるじゃないですか。
そして、恋愛を楽しむ時間さえも。
そういった時間すべて無駄だというんですよ。

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ブンちゃん

異様なほどの効率主義か…。
それでワンオペ問題につながったりすんだよね。
結構、現代社会の風刺みたいなとこあるね。
約半世紀前に書かれた話だけど。

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みちぱん

やっぱり、余裕って大事だなぁと思うんですよ。
この世界の人々は、時間を節約するようになったせいで
せかせかいらいらしながら生きるんです。
みんな怒りながら生きているんですよ。
私の場合なんですけれど、余裕がなくて焦ると
ミスが増えるし、「良い仕事」が全然できない。
たぶん、いっぱいいっぱいになると、
人間って壊れるようにできていると思うんですよね。
多少の余裕がないと「人間的な生活」が出来ない。

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ブンちゃん

元を辿れば、そういった節約主義の人間のせいだよね。
最近は多様性って言葉が蔓延していて、
そう何もかも受け入れられないだろって
思うこともあるんだけど、
ひとつの価値観が世界を支配すると、
それはそれで地獄絵図だな。

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みちぱん

この世界にモモという女の子がいて
本当に良かったと思いました。
最終的にモモVS時間貯蓄銀行な構図になるのですが
人間のエゴVSエゴともとれますよね。
なんとなく、現代でこんな戦いが起きたら
銀行に負けちゃうような気もします。

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ブンちゃん

時短術とか重宝されるしね。
その方が良いこともある。
やっぱり、取捨選択の問題なのかな。
その人にとって「大事なもの」を取りこぼさない、
その「大事なもの」を誰も批判しない、
そんな世界だったらいいけどね。

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みちぱん

ひとつだけ言えるのは、
私が「モモ」に割いた時間は
決して「無駄」などではなかった、ってことですかね。
みなさんも機会があれば読んでみてください。